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えいほんどじょうりくせんのぜんや
英本土上陸戦の前夜
海野 十三
「新青年」1941(昭和16)年 2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,727 字 · 72 页
河口には、たしかに防潜網を吊っているらしい浮標が、夥しく浮び、河口を出ていく数隻の商船群の前には、赤い旗をたてた水先案内らしい船が見えるが、これは機雷原を避けていくためであろう。またはるかに港外には駆逐艦隊が活発に走っていた。
(ドイツ軍の上陸作戦を、極度に恐れているのだな)
仏は、河口の異風景に気を取られているうちに、馬車は、いつの間にか、小さい山を一つ登って、鑑識研究所の前についた。
仏は、門衛に、刺を通じた。
門衛は、紹介状の表を見て、本館へ電話をかけた。
「所長は、生憎出張中ですが、今夜あたり、ここへお戻りです。副長からのお話ですが、明朝、もう一度、御出で願うか、それとも御急ぎなら、所に附属している宿泊所で、お待ちになってはということでございますが、どっちになさいますか」
「そうですか。では……では、宿泊所へ案内して頂きましょうか。私は、早く博士にお目に懸りたいのでしてね」
「よろしゅうございます」
門衛は、別なところへ、電話をかけた。そして、副長の命令により客人のため室を用意するようにいった。
「今、宿泊所の女が迎えに参りますから、ちょっとお待ちを」