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えいほんどじょうりくせんのぜんや

英本土上陸戦の前夜

海野 十三

「新青年」1941(昭和16)年 2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,727 字 · 72 页

青空文庫

いずれも皆、そのあたりを歩いていた町の人々らしかった。

トラックは、それから暫く走ったが、やがて「防空壕アリ」と建札のあるビルディングのところまで来ると、ぴたりと停った。

「さあ、防空壕へはいった。しずかに、そして早く……」

指導員らしいのが叫んだ。

仏天青も、人々のうしろから、柵の中にはいった。狭い下り坂を、ついていくと、やがて、電灯のついただだっ広い部屋が見えた。ぷーんと饐えくさい空気が、彼の鼻をうった。

彼の頭は、急に、ずきんずきんと痛みだした。よほど廻れ右をしようかと思ったが、あとからまた押してくる人で、それは不可能だった。

婦人の金切声と、子供の泣き叫ぶ声とで、壕の中は、さらに息ぐるしかった。天井は、角材を格子に組んであったが、非常に低かった。換気もよろしくない。監獄の防空室にくらべると、たいへん劣る。

「おい、立ち停らんで、もっと奥へはいってくれ」

「そう押しても、駄目だよ。前には、子供がいるんだ」

「おい、煙草の火を消せ。消さないと、つまみ出すぞ」

人気は荒かった。彼は押されているうちに斜面を滑って、避難の市民の頭のうえに墜ちそうになった。