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きのこがり

茸狩り

和辻 哲郎

「思想」1936(昭和11)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,663 字 · 6 页

青空文庫

赤茸のような鮮やかな赤色でもかつて美しさを印象したことはない。それは気味の悪い、嫌悪を催す色であった。スドウシやヌノビキなどは毒茸ではなかったが、何ら人を引きつけるところはなかった。

子供にとって茸の担っていた価値はもっと複雑な区別を持っているのであるが右にあげただけでもそう単純なものではない。このような区別は希少性の度合からも説明し得られるであろう。しかし、希少性だけがその規定者ではなかった。どんなに珍しい種類の毒茸が見いだされたとしても、それは毒茸であるがゆえに非価値的なものであった。では何が茸の価値とその区別とを子供に知らしめたのであろうか。子供の価値感がそれを直接に感得したのであろうか。もし色の美しさがその決定者であったならば、そうも言えるであろう。しかし赤茸の美しい色は非価値であった。色の美しさではなく味のよさに着目するとしても、子供には初茸の味と毒茸の味とを直接に弁別するような価値感は存せぬのである。茸の価値を子供に知らしめたのは子供自身の価値感ではなくして、彼がその中に生きている社会であった。すなわち村落の社会、特に彼を育てる家や彼の交わる仲間たちであった。