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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

ただ自分にはこう云う感興が演芸会よりも舞踏会よりも薬になるように思われる。ファウストよりも、ハムレットよりもありがたく考えられる。こうやって、ただ一人絵の具箱と三脚几を担いで春の山路をのそのそあるくのも全くこれがためである。淵明、王維の詩境を直接に自然から吸収して、すこしの間でも非人情の天地に逍遥したいからの願。一つの酔興だ。

もちろん人間の一分子だから、いくら好きでも、非人情はそう長く続く訳には行かぬ。淵明だって年が年中南山を見詰めていたのでもあるまいし、王維も好んで竹藪の中に蚊帳を釣らずに寝た男でもなかろう。やはり余った菊は花屋へ売りこかして、生えた筍は八百屋へ払い下げたものと思う。こう云う余もその通り。いくら雲雀と菜の花が気に入ったって、山のなかへ野宿するほど非人情が募ってはおらん。こんな所でも人間に逢う。じんじん端折りの頬冠りや、赤い腰巻の姉さんや、時には人間より顔の長い馬にまで逢う。百万本の檜に取り囲まれて、海面を抜く何百尺かの空気を呑んだり吐いたりしても、人の臭いはなかなか取れない。それどころか、山を越えて落ちつく先の、今宵の宿は那古井の温泉場だ。