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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

「なるほど面白そうね。じゃ、今あなたが読んでいらっしゃる所を、少し話してちょうだい。どんな面白い事が出てくるか伺いたいから」

「話しちゃ駄目です。画だって話にしちゃ一文の価値もなくなるじゃありませんか」

「ホホホそれじゃ読んで下さい」

「英語でですか」

「いいえ日本語で」

「英語を日本語で読むのはつらいな」

「いいじゃありませんか、非人情で」

これも一興だろうと思ったから、余は女の乞に応じて、例の書物をぽつりぽつりと日本語で読み出した。もし世界に非人情な読み方があるとすればまさにこれである。聴く女ももとより非人情で聴いている。

「情けの風が女から吹く。声から、眼から、肌から吹く。男に扶けられて舳に行く女は、夕暮のヴェニスを眺むるためか、扶くる男はわが脈に稲妻の血を走らすためか。――非人情だから、いい加減ですよ。ところどころ脱けるかも知れません」

「よござんすとも。御都合次第で、御足しなすっても構いません」

「女は男とならんで舷に倚る。二人の隔りは、風に吹かるるリボンの幅よりも狭い。女は男と共にヴェニスに去らばと云う。ヴェニスなるドウジの殿楼は今第二の日没のごとく、薄赤く消えて行く。