轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
「週刊朝日春季増刊」朝日新聞社、1950(昭和25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,178 字 · 72 页
椙村半三郎はもう十八歳で、むろん元服しているし、長身の痩形ではあるが、骨組の逞しい凛とした青年になっていた。僅かに数カ月会わなかっただけであるが、菊千代には見ちがえるような感じだった。躰格に比べてやや小さい頭部の、ひき緊ったおもながな顔に、濃い眉と相変らず濡れたように赤い唇とが眼をひく。……菊千代はいきなり彼の胸へとびつきたいような衝動にかられた。殆んど身が浮きそうになった。しかしそれはたちまち激しい憎悪に変り、膝の上の手が震えだした。
「今日はききたいことがあって呼んだのだ、いらぬことは申すには及ばない。みがきくことに返辞だけすればよい」
菊千代はできるだけ冷やかにいった。
「そのほう菊千代が男であるか、女であるか知っているであろうな」
「――おそれながら」
「返辞だけ申せ、知っているかどうか」
半三郎は両手をついたまま黙っていた。この部屋へはいってから、彼はまだいちどもこちらを見ない。蒼いほど澄んだ白皙の面を伏せ、なにかを耐え忍ぶとでもいうように、固く口をひきむすんでいた。
「返辞をせぬか、半三郎」菊千代は震えながら叫んだ、「――そのほう菊千代を若年とみてあなどるのか」