轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

「週刊朝日春季増刊」朝日新聞社、1950(昭和25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,178 字 · 72 页

青空文庫

――このままでは気が狂ってしまう。

菊千代はそう思うようになった。どうしても制御することのできない衝動的な行為が、自分でぞっとするほど怖ろしかった。これを続けてゆけば狂人になる、必ず発狂するだろうという気がした。

――山へはいって静かにくらそう。

江戸にいても慰めはない。世捨て人になって、山へこもって平安に生活したい、そうすることができれば少なくとも狂人にはならずに済むだろう。それが自分に残された唯一の道だ。菊千代はこう心をきめて、中山へ移ることを父に頼んだ。……貞良も菊千代の行状には当惑していたらしい、ついぞ小言めいたことはいわなかったが、中山へゆきたいと聞くと、愁眉をひらくといった表情で、それはよかろうとすぐに承知して呉れた。

幕府への手続きでちょっと暇取ったが、二十五歳の年の二月、菊千代は江戸を立って中山の屋敷へ移った。樋口次郎兵衛は老年なので、そのときいとまをやり、身ぢかの者では松尾と矢島弥市だけを伴れていった。

中山は嵩間の本城から五里ばかり離れたところで、屋形はなだらかな谷峡の丘の上に在った。敷地は五千坪ばかりだろうか、三方に築地塀をめぐらし北側は柵になっていて、そのうしろは深い森がそのまま山へと続いている。