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はなばなしきいちぞく
華々しき一族
森本 薫
「劇作」1935(昭和10)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,204 字 · 94 页
昌允 しかし、俺だってそんなことは気がつかなかった。
未納 美※(「にんべん+予」、第3水準1-14-11)さんね。須貝さん好きよ。何とかしなくちゃァ。
昌允 お前と、どっちが沢山だ。
未納 妾なんか、なんでもないんだったら。
昌允 (未納の方を見ないで)お前川原で泣いてたろう。
未納 嘘だわ、そんなこと。
昌允 泥でよごれた顔と、涙でよごれた顔と見わけがつかないと思ってたのか。
未納 ――。
昌允 (坐る)お前が石を、擲ってた時、近よって行ったのは俺だよ。
未納 ――。
昌允 須貝さんだと思ってたんだろう。あの時は泣いてなかったな、すると……(ふと云い止んで)お前、邪推じゃないだろうな。
未納 ないとは言えないわ。ふっと、そんな気がしただけなんだもの。証拠のあることじゃない。
昌允 だが、お前がそう感じたんならそうだろう。
未納 妾、受け合わないわよ。そりゃ、妾だって、考えたくないことだもの。邪推かもしれないわ。
昌允 おい、俺を慰めてやろうなんて考えを起したって駄目だぞ。俺はまだ、お前に……。
未納 妾だって、まだお兄さんに同情してるほど余裕は出来てやしないわ。妾が助けてほしいくらいだわ。