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らくご・きょうそれつでん
落語・教祖列伝
01 神伝魚心流開祖
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,807 字 · 28 页
再びカメの目が没し、額が没し、頭が没してしまうと、その絶対速度に神気を感じて、十兵衛は思わずブルブルッとふるえてしまった。
彼は殿様の前へにじりすすむと平伏して、ハラハラと涙を流して、
「殿。十兵衛は不覚でござった。カメ殿こそは天下一の名人でござる。かほどの名人がおわすものを、身の未熟を知りも致さず、今日に至るまで殿の寵に甘えたわが身が羞しゅうござる。拙者本日よりカメ殿に弟子入り致し、せめて神技の一端を会得したいと存じまする」
そしてカメが水から静々とあがってくると、十兵衛はその水際へ狂気の如くに駈けつけて、カメの膝下にひれふし、
「おお、わが師」
と叫んだまま、地に伏して、しばし身動きもしなかった。
こうしてカメは、水泳指南番として、召抱えられることになった。誰よりよろこんだのは、十兵衛であった。カメはサムライの行儀作法が窮屈だから、甚しく喜ばなかった。しかし、彼が我慢したのは、メシがタラフク食えたからである。
カメは五頭亀甲斎魚則といういかめしい姓名をもらった。
禄高は五石二人扶持という指南番にしては甚しい小禄であるが、オカへあがるとバカであるから、領下の民にサムライをバカにさせる気風をつくってはこまる。