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はとみき
葉と幹
小川 未明
「読売新聞」1920(大正9)年5月7~8日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,622 字 · 4 页
おまえたちぐらいの葉は、この山にざらにあるじゃないか。人間どもは、俺の姿を値打ちにしようと思っているのだ。」と、幹は葉を冷笑しました。
「しかし、私たちは、この山からどこへゆくのでしょう。もう海を見ることもできません。あちらの平野を見下ろすこともできません。たいへんなことになりました。」と、葉は気をもみはじめました。
「おまえたちのことを俺が知るものか。人間どもは俺を大事にするだろう。苦しいのもすこしの間だ。じきにどこかいいところへ移して、俺の弱らないようにするにちがいない。そして、また来年は新しい芽を出して、俺の威厳がいっそう加わるだろう。」と、幹はいいました。
「そんなら、私たちはどうなるのですか?」と、多くの葉は、泣き声を出して訴えましたが、幹は黙っていました。
「ああ、ここまで上ると、よい景色だ。海が見える。」と、先刻のくわをかついだ男は、かえでの木のそばに現れていいました。
二人の男は、ついにかえでの木を掘り出しました。一人はその木をかついで、一人はくわをかついで、ともに山を下りました。そして、かえでの木を車の上に乗せて、ガラガラと田舎路を引いて町の方へとゆきました。