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あし

葦

山本 周五郎

「週刊朝日」朝日新聞社、 1947(昭和22)年6月22日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,406 字 · 25 页

青空文庫

なぜなら、良人は将来のためにそれ以上子を生むことを欲せず、彼女を近づけなくなったから、そのためにちょっとした問答があった。

「そういうことは不しぜんではないでしょうか」

「それが人間生活だ、しぜんのままに従うのは禽獣草魚だけだ。田や畑は、しぜんに任せると役にも立たない雑草に掩われてしまう。人間は撰択し、刈り、抜き、制限する。これは反自然だが、人間を利益し進歩させる」

「わたしには理屈はわかりません、けれどわたくしたちほどの身分なら、もう二人や三人は育てるのが普通だと思います」

「おまえは計算を忘れている、長男は家を継ぐが、二男以下は養子にゆくか、部屋住で一生を終らなければならない、それは当人の不幸ばかりでなく、世間の無要な負担になる、武家で家を分けるだけの蓄財なしに子を生むのは不徳義だ、いちどよく計算をしてみるがいい」

妻は三人の子供たちを溺愛することで不満を柔らげ、同時に自分を保証しようとした。

彼はこのあいだ郡目付を二年やり、勘定奉行所の役所取締りに出世した。千神市蔵が勘定奉行になった跡を襲ったのである。食禄は三百二十石になり、足軽も七人預かっていた。