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ヒューネラル・マーチ

葬送行進曲

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1931(昭和6)年4月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,494 字 · 25 页

青空文庫

「そんな馬鹿な事はあるまい、警察も、酒巻君も――」

「そんなものは当になるものですか」

勢子の鋭い声音です。

「何うして隆が殺されたと言うんだ。俺も隆の親だ、もう少し詳しく話してくれ」

「警察にも検事局にも、幾度も幾度も注意して、あの通りですもの、此上は私が自分で隆の敵を討つより外はありません。私は五十日間、夜の目も寝ずに研究して、漸くこの秘密を突き留めたのです」

「え? それはどう言う意味だ、話してくれ」

「隆は矢張り殺されたんです。あの晩、私に催眠薬を飲ました犯人は、貴方にも催眠薬を飲まして、恁々と隆を殺して、何食わぬ顔をしてすまして居たのです」

「誰だ、それは?」

讃之助は、半信半疑乍ら少し気色ばみました。盗癖があって離別したにしても、この勢子と言う女の異常な精神力や、根強い研究心を知って居るだけに、斯う言われると真剣に訊いて見度くなります。

「それは後でお話しましょう――隆の死因が、毒物でなく、刃物でなく、注射で無いとすれば何んでしょう? あんな気の弱い子はひどく脅かした丈けでも死ぬことがあるそうですが、死んだ隆の表情は極く穏かで、脅かされて死んだものとはどうしても思えません」