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やぶおとし
藪落し
山本 周五郎
「アサヒグラフ」1935(昭和10)年2月17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,118 字 · 14 页
お豊はそのまま収穫まで寝ついた、そのあいだに姑のお常が死に、つづいて生れた男の子が病気になった。乳不足がもとでひどい栄養不良になったのである。
勘三郎は収穫がすむまで家で働いた、その年はどこも近年にない出来秋であったが、与石の田だけは手入れが届かなかったので、ほとんど三分の一がみず稲になってしまったし、夏蚕から晩秋蚕まで繭を掃かなかったから、年末にはおそろしい窮乏に見舞われた。
溝の桑畑一町足らずを、半分ばかり失ったのはその年のことである。
年が明けると間もなく、お豊がどうやら起きられるようになったので、勘三郎は待ちかねたようにふたたび山入りを始めた。
――今までと違って、こんどは坊やができたのですから、どうか気をつけてください、危ない場所へは近づかないようにしてください。
――大丈夫だ。
勘三郎は、妻の乱れた顔をみながら、
――おまえには苦労をさせるが、これもいつまで続くわけではない、おれにはもうだいたい砿脈の見当がついてきたのだ。
――それはよろしゅうございました。
お豊は温和しく頷いて、
――どうか家のことは心配せずに、早くやまを当ててください。