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そせい
蘇生
豊島 与志雄
「新小説」1918(大正7)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,974 字 · 31 页
婆さんが褞袍を着てつっ伏していた。それを見ると彼は何となく安心を覚えてまた眼を閉いだ。そして、電球に被せてある黒い紗の布がいつまでも眼の中に残っていた。
……とん、とん、とん、と間を置いた物音が何処からか聞えて来た。するといつのまにかそれが人の足音に変った。梯子段を上ってくる音だった。敬助はふと眼を開いた。足音はなお続いた。彼はじっと待っていた。然しいつまでもその足音は梯子段を上りきらなかった。そのうちにふと足音は止んだ。
敬助はぞっと全身に戦慄を覚えた。そしてその恐怖の情が静まると、彼の心は急に暗い淵の中につき落された。彼は前後を身廻した。室の中は静まり返ったような気がした。そして思わず「慶子さん!」と叫んだ。声には出なかったがそれが室の中一杯に反響したようだった。「慶子さん、慶子さん!」そういう響きが四方から起ってきた。そして「慶子は死んだ」という感情が現実の姿を取ってまざまざと現われてきた。
彼は急に起き上った。皆疲れきった眠りに陥っていた。機会は絶好だった。彼は立ち上ろうとした。然し全身に力がなくてまた其処に屈んでしまった。その時彼の頭にちらと閃めいたものがあった。