轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とらがり
虎狩
「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,260 字 · 48 页
その冷たいバナナを喰べながら、私は妙な事を考えついた。今から思うと、実に笑い話だけれど、其の時私はまじめになって、此のバナナの皮を下へ撒いておいて、虎を滑らしてやろうと考えたのだ。勿論私とても、屹度虎がバナナの皮で滑って、そのためにたやすく撃たれるに違いないと確信したわけではなかったが、しかし、そんな事も全然あり得ないことではなかろう位の期待を持った。そして喰べただけのバナナの皮は、なるたけ遠く、虎が通るに違いないと思われた方へ投棄てた。さすがに笑われると思ったので、此の考えは趙にも黙ってはいたが。
さて、バナナは失くなったが、虎は仲々出て来ぬ。期待の外れた失望と、緊張の弛緩とから、私はやや睡気を催しはじめた。寒い風に顫えながら、それでも私はコクリコクリやりかけた。そうすると、趙一人おいて向うにいた趙の父親が私の肩先を軽く叩いて、覚束ない日本語で、笑いながら、「虎よりも風邪の方がこわいよ」と注意してくれた。私はすぐに微笑を以て、その注意に応えた。が、また間もなく、ウトウトやって了ったものらしい。そうして、それから、どの位時が経ったものか。私は夢の中で、さっき趙に聞いた話の、朝鮮人が虎に襲われている所を見ていたようだった。