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きょこうのはる

虚構の春

太宰 治

「文学界」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页

青空文庫

御返信ネガイタク、参銭切手、二枚。葉書、一枚。同封仕リ候。封書、葉書、御意ノ召スガママニ御染筆ネガイ上候。ナオマタ、切手、モシクハ葉書、御不用ノ際ハソノママ御返送ノホドオ願イ申上候。太宰治殿。清瀬次春。二伸。当地ハ成田山新勝寺オヨビ三里塚ノ近クニ候エバ当地ニ御光来ノ節ハ御案内仕ル可ク候。」

月日。

「俺たち友人にだけでも、けちなポオズをよしたら、なにか、損をするのかね。ちょっと、日本中に類のない愚劣頑迷の御手簡、ただいま覗いてみました。太宰! なんだ。『許す。』とは、なんだ。馬鹿! ふん、と鼻で笑って両手にまるめて窓から投げたら、桐の枝に引かかったっけ。俺は、君よりも優越している人間だし、君は君もいうように『ひかれ者の小唄』で生きているのだし、僕はもっと正しい欲求で生きている。君の文学とかいうものが、どんなに巧妙なものだか知らないが、タカが知れているではないか。君の文学は、猿面冠者のお道化に過ぎんではないか。僕は、いつも思っていることだ。君は、せいぜい一人の貴族に過ぎない。けれども、僕は王者を自ら意識しているのだ。僕は自分より位の低いものから、訳のわからない手紙を貰ったくらいにしか感じなかった。