轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ほたる
蛍
織田 作之助
「文芸春秋」1944(昭和19)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,875 字 · 21 页
間もなく登勢はお良という娘を養女にした。樽崎という京の町医者の娘だったが、樽崎の死後路頭に迷っていたのを世話をした人に連れられて風呂敷包みに五合の米入れてやった時、年はときけば、はい十二どすと答えた声がびっくりするほど美しかった。
伊助の浄瑠璃はお光が去ってからきゅうに上達し、寺田屋の二階座敷が素義会の会場につかわれるなど、寺田屋には無事平穏な日々が流れて行ったが、やがて四、五年すると、西国方面の浪人たちがひそかにこの船宿に泊ってひそびそと、時にはあたり憚からぬ大声を出して、談合しはじめるようになった。しぜん奉行所の宿調べもきびしくなる。小心な伊助は気味わるく、もう浄瑠璃どころではなかったが、おまけにその客たちは部屋や道具をよごすことを何とも思っていず、談論風発すると畳の眼をむしりとる癖の者もいた。煙草盆はひっくりかえす、茶碗が転る、銚子は割れる、興奮のあまり刀を振りまわすこともあり、伊助の神経には堪えられぬことばかしであった。
登勢は抜身の刀などすこしも怖がらず、そんな客のさっぱりした気性もむしろ微笑ましかったが、しかし夫がいやな顔をしているのを見れば、自然いい顔もできず、ふと迷惑めいた表情も出た。