轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くも
蜘蛛
甲賀 三郎
「文学時代」1930(昭和5)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,314 字 · 22 页
おそろしい蜘蛛の眼だ。
×月×日
蜘蛛の眼がおそろしい。おれはとうていこの部屋のなかで眠ることはできぬ。よしッ、あすはいよいよ最後の勝負だ。見ろ、Sの毒蜘蛛め、ひとつかみにつぶしてやるぞ。
* * *
おそろしい蜘蛛の日記はここで終っていた。読み終った私はおそろしさにガタガタとふるえだした。ふと気がつくと、私の周囲にズラリとならんだ函のなかから、幾百幾千と数限りない蜘蛛が右から、左から、前から、後からゾロゾロと私めがけてよってくるのだ。私は無我夢中にドアにとびついて押しあけた。ふしぎなことにはそこにちゃんと階段があった。私はあとをもみずに飛ぶように走りおりた。
数日のあいだ私は熱をだして病床によこたわっていた。そのあいだに奇妙な研究室は火を出して、内部はすっかり焼けてしまい、数百の蜘蛛もことごとく焼け死んだ。当局の見込みは乞食か浮浪人の類がはいりこんで火を出したのだろうというのだった。もし火を出さなかったら、あの異様な塔は永久に静かに回転をつづけて、容易に人に気づかれなかったかもしれないと、私はいまでもそう思っている。
(〈文学時代〉昭和五年一月号発表)