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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

その横に仰向けにひっくり返って、林檎を食いながら、表紙のボロボロした講談雑誌を見ているのがいた。

四人輪になって飲んでいたのに、まだ飲み足りなかった一人が割り込んで行った。

「……んだべよ。四カ月も海の上だ。もう、これんかやれねべと思って……」

頑丈な身体をしたのが、そう云って、厚い下唇を時々癖のように嘗めながら眼を細めた。

「んで、財布これさ」

干柿のようなべったりした薄い蟇口を眼の高さに振ってみせた。

「あの白首、身体こったらに小せえくせに、とても上手えがったどオ!」

「おい、止せ、止せ!」

「ええ、ええ、やれやれ」

相手はへへへへへと笑った。

「見れ、ほら、感心なもんだ。ん?」酔った眼を丁度向い側の棚の下にすえて、顎で、「ん!」と一人が云った。

漁夫がその女房に金を渡しているところだった。

「見れ、見れ、なア!」

小さい箱の上に、皺くちゃになった札や銀貨を並べて、二人でそれを数えていた。男は小さい手帖に鉛筆をなめ、なめ何か書いていた。

「見れ。ん!」

「俺にだって嬶や子供はいるんだで」白首のことを話した漁夫が急に怒ったように云った。

そこから少し離れた棚に、宿酔の青ぶくれにムクンだ顔をした、頭の前だけを長くした若い漁夫が、