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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

なにをしよったんやろ、奇人ドクトルは……」

そのとき帆村は横合から声をかけた。

「おおこれは帆村はんだすな。まだ御泊りでしたか。えらいところをごらんに入れますわ、ハッハッハッ」

検事の村松氏に案内されていったとき、知合いになった住吉署の大川巡査部長であった。帆村は邪魔にならぬように、傍についていた。

裏口に廻った部下の一人が帰ってきて、二階の西側の鎧窓に鍵のかかっていないところがあって、そこから中へ這入れると報告をした。大川は悦んで、

「よし、そこから這入れ、三人外に残して、残り皆で這入るんや。俺も這入ったる」

巡査部長は、佩剣を左手で握って、裏口へ飛びこんでいった。帆村もそのまま一行の後に続いていった。

樋を伝わって、屋根にのぼり、グルリと壁づたいに廻ってゆくと、なるほど四尺ほど上に鎧戸の入った窓がポッカリ明いていて、そこから一人の警官がヒョイと顔を出した。

「中は、ひっそり閑としてまっせ」

「そうか。――油断はでけへんぞ。カーテンの蔭かどこかに隠れていて、ばアというつもりかもしれへん。さあ皆入った。さしあたり煙突に続いている台所とかストーブとかいう見当を確かめてみい」