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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

高い壁の上には誰とも知れぬがプロシア人らしい学者風の人物画が三枚ほど懸っている。横の方の壁には、これも独逸文字でギッシリと説明のつけてある人体解剖図と、骨骼及び筋肉図の大掲図とが一対をなしてダラリと下っている。

色が褪せたけれど、黒のふちをとった黄色い絨毯が、ドーンと床の上に拡がっていた。そして紫檀に似た材で作ってある大きな角卓子が、その中央に置いてある。その上には、もとは燃えるような緑色だったらしい卓子掛けが載って居り、その上には何のつもりか、古い洋燈がただ一つ置かれてあった。

室内には、この外に、奇妙な飾りのある高い椅子が三つ、深々とした安楽椅子が四つ、それから長椅子が一つ、いずれも壁ぎわにキチンと並んでいた。

もう一つ、書き落としてはならないものがあった。それはこの部屋にはむしろ不似合なほどの大暖炉だった。まわりは黒と藍との斑紋もうつくしい大理石に囲われて居り、大きなマントルピースの上には、置時計その他の雑品が並んでいた。しかもその火床には、大きな石炭が抛りこまれて居り、メラメラと赤い焔をあげて、今や盛んに燃えているところだった。

「これやア。