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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

帆村は早くその報告が知りたいものだと思った。しかしまだ二、三日は懸るのであろう。

「それから正木さん。ドクトルの娘のカオルさんたちはどうしました。いまの話では行き違いになったらしいが、今どこにいるのですか」

「ああそのことや。実はドクトルからも尋ねられたことやけれど、娘はんとあの上原山治という許婚は、ドクトルが居らへんもんやさかい、こっちへ来たついでやいうて、いま九州の方かどっかへ旅行に出とるのんや。帰りにきっと本署へ寄るという約束をしたんやさかい、そのうち寄るやろ思うてるねん」

「ほほう、そうですか」

大戦慄

非常警戒の夜は、張り合いのないほど静かに更けていった。蠅男はどこにひそんでいるのか、コトリとも音をたてない。ドクトルの騒ぎが、最後の活気であるかのように思われた。

この調子なら、蠅男もこの一画に閉じこめられたまま、あの殺人宣言はむなしく空文に終ってしまうことかと思われた。

正木署長が呼ばれて、交番の方へ歩いていった。

しばらくして、署長はトコトコと元の位置へ帰ってきた。

「どうかしましたかネ」

帆村は退屈さも半分手つだって、署長に声をかけた。