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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

起き上ろうとするが、生憎首のところまで砂に埋っており、肩の上からはお竜のはちきれるように肥えた膝頭が、盤石のような重味となって圧しつけているのであった。これでは身動きさえできない。

(参った。――しかしまだ血路の一つや二つはありそうなものだが!)

帆村は全身の血を脳髄のなかに送って、死線を越えようと努力をつづけていた。

「こ、殺される前に――」

と、帆村はふりしぼるような声をあげた。

「しッ、静かにしろ」

と、蠅男は依然として砂のなかから首だけだして眼を剥いた。

「こ、殺される前に、一つだけ聞きたいことがある。く、頸をすこし、ゆ、ゆるめて……」

それを聞くと、蠅男はなに思ったか、お竜の方にそれとサインを送った。その効目か、お竜の指の力は、申訳にすこしゆるんだようだ。

「早く云え」

「うむ」と帆村は喘ぎ喘ぎ「貴様は、なぜあの三人を殺したのだ。鴨下ドクトルと玉屋と塩田先生と、この三人を殺すには定めし理由があったろう。それを教えてくれ」

「そのことか」と蠅男はたちまち見るも残忍な面になって、

「冥土の土産にそれを聞かせてやろうか。鴨下というエセ学者は、五体揃った俺の身体を生れもつかぬこんな姿にしてしまった。