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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

素破、なにごとか、事件が起ったらしい。

「や、やられたッ。助けてえ――死んでしまうがなア――」

と、これは紛れもない男の声。

警官たちはハッと顔色をかえた。そして反射的に、その叫び声のする方へ駈けだした。

「こらこら、神妙にせんか。――」

騒動の階段の下から、襟がみを引捕えられて、猫のように吊しあげられたのは一人の男と女。

「どうしたどうした」

「どちらが蠅男や」

「蠅女も居るがナ」

「あまりパッとせん蠅男やな」

そんな囁きが、周囲から洩れた。

正木署長は前へ進み出で、

「コラ、お前は見たような顔やな」

と男の方にいった。

「へえ、私は怪しい者ではござりまへん。会社の庶務にいます山ノ井という者で、今日社長の命令で手伝いに参りましたわけで……」

「それでどうしたというのや。殺されるとか死んでしまうと喚きよったは――」

「いや、それがモシ、私が階段の下に居りますと上でドシドシとえらい跫音だす。ひょっと上を見る途端に、なにやら白いものがスーッと飛んできて、この眉間にあたったかと思うとバッサリ!」

「なにがバッサリや。上から飛んで来たというのは、そらそこに滅茶滅茶に壊れとる金魚鉢やないか。