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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

僕もそれに同感しています」

「はあ、そうでっか」と糸子は肯き、「こんな高いところに吊るのやったら、ちょっと簡単には出来まへんやろな。犯人が、いま云やはったようなことをするのに、時間がどの位かかりまっしゃろ」

「ええ、なんですって。この犯行にどの位時間が懸るというのですか。うむ、それは頗る優秀なる質問ですね。――」

帆村は腕を組んで、犯行の時間を推定するより前に、なぜ糸子が、このような突然の質問を出したかについて訝った。

答に出た「蠅男」

「犯行に費した時間はというと、そうですね、まず少くとも二分は懸るでしょうね。手際が悪いとなると、五分も十分も懸るでしょう」

「ああそうでっか。二分より早うはやれまへんか」

と糸子は帆村に念を押した。

「二分より早くやるには余程人数が揃っているとか、或いはまた道具が揃っていないと駄目ですね」

「ああそうでっか。――二分、ああ二分はかかりまっかなア」

糸子はなぜか二分という時間にこだわっていた。

帆村は糸子の問に応えているうちに、妙な事実に気がついた。それは犯人はどんな台を使って総一郎をこんな高いところに吊りあげたかという疑問だった。