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はえ

蠅

海野 十三

「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页

青空文庫

彼が右手にもった桴で太鼓の皮をドーンと叩くと、胴の上に設けられてある小さい孔から、蠅が一匹ずつ、外へ飛び出す仕掛けになっていた。

彼の検挙によって、例の奇病が跡を絶ったのは云うまでもない。

第三話 動かぬ蠅

好き者の目賀野千吉は、或る秘密の映画観賞会員の一人だった。

一体そうした秘密映画というものは、一と通りの仕草を撮ってしまうと、あとは千辺一律で、一向新鮮な面白味をもたらすものではない。そこで会主は、会員の減少をおそれて一つの計画を樹てた。それは会員たちから、いろいろの注文を聞き、それに従って、映画の新鮮な味を失うまいと心懸けた。果してそれは大成功だった。会主の狭い頭脳から出るものよりも、同好者の天才的頭脳を沢山に借りあつめることが、いかに素晴らしい映画を後から後へと作りあげたか、云うまでもない。目賀野千吉は、その方面での、第一功労者にあげねばならない人物だった。

会は大変儲かった。会は彼の功労を非常に多とし、遂に千五百円を投げ出して、新邸宅を建てて彼に贈った。

「ほほう。あんな方面の労務出資が、こんなに明るい新築の邸宅になるなんて、世の中は面白いものだナ」