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はえ

蠅

海野 十三

「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页

青空文庫

大江山捜査課長も黙っていた。目の前に現われた事実が、帆村の予言したところと、あまりによく一致して来たので。

「さあ大江山さん」と帆村は捜査課長を促した。「これから、あの蠅を採取した地区を探してみるのです。もっと大胆な推定を下すならば、犯人は沢山の蠅を飼育し、その一匹一匹に病原菌を持たせて、市民に移していったのです。犯人は、あの奇病の流行した地区の幾何学的中心附近に必ず住んでいるに違いありません。さあ行きましょう。行って、その間接の殺人魔を捉えるのです」

二人は病理学研究室を飛び出すと、すぐに自動車を拾った。いわゆる奇病発生地区の幾何学的中心地が、帆村の手で苦もなく探し出された。

二人が、チンドン屋の寅太郎という、いつも手甲脚絆に大石良雄を気取って歩く男を捉えたのは、それから間もなくの出来ごとだった。その寅太郎の遂に自白したところによると、彼こそ正しくその犯人だった。極左の一人として残る医学士の彼が、蠅に黴菌を背負わして、この恐ろしい犯行を続けていたことが明かになった。ねじけた彼にとって、市民をやっつけることは、またとない悦びだったのだ。彼が丹精して飼育したその毒蠅は、チンドンと鳴らして歩くその太鼓の中にウジャウジャ発見された。