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はえ

蠅

海野 十三

「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页

青空文庫

会主が家をくれたのも、その映画をうつさんがために外ならなかった。なんとなれば、およそ彼ほどの好き者は、会主の知っている範囲では見当らなかったのだ。会主は彼が本気で実演してくれれば、どんなにか会員を喜ばせる映画が出来るか、それを知っていたのだ。むろん彼女は、新宅の建築費の十倍に近い金を既にあの映画によって儲けていたのだった。

蠅は? 蠅は単に小さい孔を隠す楯にすぎなかった。薄い黒紗で出来ている蠅の身体はよく透けて見えるので、撮影に当ってレンズの能力を大して損うものではなかったのである。

第四話 宇宙線

宇宙線という恐ろしい放射線が発見されてから、まだいくばくも経たないが、人間は恐ろしい生物だ、はや人造宇宙線というものを作ることに成功した。あのX光線でさえ一ミリの鉛板を貫きかねるのに、人造宇宙線は三十センチの鉛板も楽に貫く。だから鉄の扉やコンクリートの厚い壁を貫くことなんか何でもない。人間の身体なんかお茶の子サイサイである。

どこから飛んでくるか判らない宇宙線は、その強烈な力を発揮して、人間の知らぬ大昔から、人体を絶え間なくプスリプスリと刺し貫いているのだ。