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はえ
蠅
海野 十三
「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页
「あの卵は、どこかにお仕舞いでしょうか」
「卵というと……」
「先日、あちらからお持ちかえりになりました、アノ駝鳥の卵ほどある卵でございますが……」
「ああ、あれか」と博士は始めて背後へふりかえった。そこには白い実験衣をつけた若い理学士が立っていた。
「あれは――、あれは恒温室へ仕舞って置いたぞオ」
「あ、恒温室……。ありがとうございました。お邪魔をしまして……」
「どうするのか」
「はい。午後から、いよいよ手をつけてみようと存じまして」
「ああ、そうか、フンフン」
博士はたいへん満足そうに肯いた。助手の理学士は、恭しく礼をすると、跫音もたてずに出ていった。彼はゴム靴を履いていたから……。
そこでクリシマ博士は、再び顕微鏡の方に向いた。そしてプレパラートをすこし横へ躙らせると、また接眼レンズに一眼を当てた。
「あのウ、先生」
「む。――」
またやって来たな、どうしたのだろうと、博士は背後をふりかえって、助手の顔を見た。
「あのウ、恒温室の温度保持のことでございますが、唯今摂氏五十五度になって居りますが、先生がスイッチをお入れになったのでございましょうか」
「五十五度だネ。