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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
「それはそれはお父様、ご乱心中には、何んと申したらよいやら、いろいろ変ったことをなさいました。また、おっしゃいもなさいました。……何から申し上げてよいやら。……おおそうそう、来栖勘兵衛という男が、お父様を討ちに来るなどと……」
「来栖勘兵衛がわしを討ちに? ……うむ、栞や、それは正気になった今のわしでも云うよ。……そういうことがあるような気がするよ」
「そうしてお父様には、ご自分を、有賀又兵衛じゃとおっしゃいました」
「…………」
「それからお父様は、来栖勘兵衛がわしを討ちに来るから、旅の浪人などが訪ねて来たら、逗留させて、加担人にしろと。……それで妾は、訪ねて参られた浪人衆を、お泊めいたしましてございます」
「そうかえ、それはいいことをしておくれだったねえ。……来栖勘兵衛は強い男なのだから、わしには、どうしても加担人が入用るのだよ」
「それからお父様は、そのようにお御足が不自由になられてからも、毎日のように、野中の道了様へ、お参詣に行かねばならぬとおっしゃいますので、いっそ道了様を屋敷内に勧請いたしたらと存じ、道了様そっくりの塚を、お庭へ築きましたところ……」