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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
えてして少女というものは、まず肉親に愛情をもつものだ。どッちにしても、彼自身が本当の対象だとは思われなかった。
「ぼくの昔の奥さんが長平さんにあこがれて離婚したということ、誰にきいたの?」
「そんなことが知りたいの?」
「なるほど。別に知らなくともいいことらしい。だが、ねえ、お嬢さんや。ぼくの昔の奥さんは、たしかに文学的で、少女趣味ですよ。しかし、あなただってさ。文学的なお嬢さんに相違ないと思うんだね。なぜなら、現世に生きる人間というものは、一応常識というものを思考の根抵におかなければいけないものですよ。だが、記代子さんは、限られた小さな現実を全部のものにおきかえているね。思考の根が、常識でなくて、あなたを主役にした劇なんだ。夢なんだよ」
「それでいいと思うわ。じゃア、あなたは誰のために生きているのよ。放二さんのためなの? それとも別れた奥さんのためなの?」
「それは、人生というものは、云うまでもなく自分のためのものさね。しかし、自分の位置、限度というものを心得なければいけませんよ。あなたはツボミのようなお嬢さんだし、ぼくは花ビラの散りかけた老いぼれですよ」