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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

ここに居たまえ」

長平は制した。

「中座してもらうぐらいなら、君をここへ連れてきやしないさ。話をみんなきいてもらって、君の判断をきいてみたいと思ったからさ。坐りなさい」

青木はあきらめた。そして自分のカバン持ちだけ立ち去らせた。

「君もガンコな人だね。ナイショ話なんてものも風流じゃないか。え?」

「君の態度を軽薄だと思わないのかい? 立候補なんてこと考えるようになると、そんな風になるもんかねえ。今日の話は、君にとっては重大なことのはずだが、君がそんな態度なら、ぼくはオツキアイはおことわりだ」

長平は我慢できなくなって、吐きだした。それだけのワケがあってのことだ。

青木はにわかにおし黙って考えこんだ。静かに手をのばして、ビールをぬいて、みんなのコップについで、

「乾杯」

呟いて、グッと飲みほした。

「いや、どうも。ぼくもね。苦しかった。しかし、それもすんで、バカになったのさ」

青白く冴えた顔に苦笑がうかんだ。

二

「礼子がお訪ねしたそうだけど、お会いできなかったって残念がっていたよ」

青木はさりげなく切りだした。落ちつきをとりもどしてガサツなところはなくなっていたが、昔のなんの衒いもなかった書斎人の青木の面影とはどこかしら違ったものだ。