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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

エンゼルの人を小馬鹿にしたような詐欺的な申出に応じることが、正しいことだろうか、と気にかかりもする。

しかし、真剣な申出だから応じるという区別の立て方にはウソがある。第一、真剣と、真剣でないものとに、本当に区別を知る人があるだろうか。いったい、真剣とは何だ。そんなものに、どこに特別の値打があるのか。今日は真剣でも、明日は真剣ではなくなるかも知れない。今日は軽薄なエンゼルでも、明日はそうでなくなるかも知れない。ウソと云えば人の心は全部がウソ。どんなにバカ正直の大マジメな心でも、ウソの裏ヅケはちゃんと在るものだ。

エンゼルの申出が軽薄だから。みすみす騙されるだけだから。そういう言いがかりをつけて金を惜しむのは不当である。だまされることは問題ではない。信念の心棒になるのは、自分の心だけである。そして、二人のために誠意をつくすということを実行すればよろしいのである。

十万円という金は、たとえ騙して取った金でも、十万円である。エンゼルは、それを十万円とし使うであろう。そして、そんなことは、こっちの気に病むことではないのである。

十五

放二は十万円をエンゼルに渡して、にわかにサッパリした気持になったので、自分の心も、たよりなく、軽薄すぎる、と思わずにいられなかった。