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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
たしかに彼は家のことには大そう興味をもっている。こんな家をたててみたいと考えて、自然に建物に目がひかれる。調度や書画のことも、自然考えているけれども、本当に買ってみたことがないせいか、好き嫌いまで、まだ漠然としている。世間では、こんな書画が値がいいそうだが、自分の好きというものが、まだ分らないのである。
なるほど商売人はうまいことを言う。家に凝ると、書画にこる。なるほど、うまい。こッちの気持、人間の気持をピタリと言い当てるのは、さすがに商売人である。こう感服したから、自分の至らないのをごまかして、彼はニコニコと考えてみせた。
「失礼ですが、こちらに御秘蔵の書画を、拝見させていただけましょうか」
「ナニ、君の方が風流人さ。この住居は借家。特に書画と名のつくものは、何一つ持たないのさ。君はどんなものが、お好きです」
「ぼくはこの、まだ若僧で、観賞力もないものですから、閑静な隠居家がすきですが、又、華やかな色彩、調度が好きなんです。サビとか、渋いということが分らぬわけではありませんが、どうしても華やかなものに気をひかれる。それで調和いたしません。この矛盾、これは悪いことでしょうか」