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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

万事都合よくいっているのだ。

「今日は私の記念日なのよ。とても嬉しいことがあったのよ。たぶん、私の生涯の記念日になると思うわ。第一回の記念日に、あなた方と祝杯をあげるのは、因縁ね。きっと、重大な意味があるのよ。お食事のとき、記念日のわけ、話しましょうね。飛びきりのフランス料理たべながら」

「まあ、素敵ね」

「青木さんは、うまくまいてちょうだいね。そんなこと、できそう?」

「ええ、カンタンよ。私たちアベックで散歩したいんですからと云ったら、その場で退散しちゃうでしょう」

記代子はクスクス笑って、あからんだ。

せつ子は記代子を送りだして、あれでも女は女なんだと、バカバカしい気持になるのであった。

四

記代子はかなり巧みに芝居を演じた。小娘としては出来すぎたほど過不足なくやったつもりであったが、青木の鋭いカンをごまかすことは不可能であった。

青木は記代子の想定どおり、アベック戦法に撃退されて二人に別れを告げたが、ただちに尾行をはじめた。

青木のカンは鋭かったが、しかしカン違いもやっていた。せつ子の帰京がおくれたことは真にうけたのである。

「この娘は長平さんの姪だというからな」