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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
インギン丁重である。さてはボーイにいたるまで堅く口どめに及んでいるのかと、青木は察しがよすぎて、
「ヤ。失敬。デップリした洋服の西郷さんに、よろしく」
と、ひきさがった。こう警戒厳重では、単身では手が廻らない。明日はカバン持ちの戸田を助手に使って、放二の社に張りこませてやろう。放二のアパートも分っているのだし、今、あせることはない。
青木は自分の宿屋へ戻ってきた。戸田は彼の指令をうけて別方面の金策にとび廻ったはずだが、その戦果はどうだろうかと、部屋へはいると、待っていたのは、戸田ではなくて、礼子であった。
「やア。あなたか。戸田君は?」
礼子は答えずに、チラと目を部屋の隅の机の方へやった。青木がそこを目で追うと、彼のカバンにいれておく書類が、机の上につみあげてある。戸田がそれを掻きまわす必要はなかったはずだが、と、近よって見ると、鉛筆で走り書の紙片がのっかっていた。
青木はそれを執りあげた。
「しばらく月給もいただきませんので、代りにいただいて行きます」
しらべて見ると、カバンと、身の廻りのものがなくなっていた。いまや、着のみ着のままだ。急場をしのぐものと云えば、腕にまいたロンジンぐらいのものであった。