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まち
街
宮本 百合子
「女性」1927(昭和2)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,689 字 · 37 页
『貴様等は出ろ! 俺達が今日からここの主人だ』」
マリーナの、下瞼の膨れた眼に涙が滲み出た。
「世の中のことは、何だって訳なしに起るもんじゃないから、店位とられたことは私も諦めますさ、自分の知らない罪で雷に打たれて死ぬ人さえあるんだものね。でも、私たった一つ諦められないのは、エーゴルをあんな恐しい男にしてしまってくれたことよ、ダーシェンカ。……元を知っている私にはやっぱり離れられない……私共はね、ダーリヤ・パヴロヴナ、二十二年一緒に暮して来たんですよ……」
しんみりしたマリーナの話をきいているうちに、ダーリヤはこれまで知らなかった深い悲しみがマリーナの心にあるのを知った。彼女はそうとも知らず他の友達と茶をのみながら、
「さ、アーニャ、お前のみなさい」
「はい、叔父さん」
エーゴル・マクシモヴィッチと哀れな姪の真似をして大笑いした自分達を私かに恥じた。ダーリヤは、真心から動かされて、対手の手を執った。
「マリーナ・イワーノヴナ、だあれもあなたがそんなに悲しい方だとは知らないでしょう、きっと。――若し、私、あなたに思いやりのないことをしていたら許して下さいね」