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うらぎり

裏切り

坂口 安吾

「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页

青空文庫

★

生きかえったセラダは二十日あまり姿を見せませんでしたが、これは米軍だか米国の役人だかの取調べをうけていたのだということです。心中行までに彼が小夜子サンに語ったところによると、彼は何か重罪を犯しているように思われるのです。彼が心中したのは小夜子サンを愛するせいではありません。なぜなら愛情からの心中は全然理由がないのです。それは小夜子さんが認めていました。そして、むしろそのために小夜子サンはいっそ楽に死のツキアイをする気持になれたもののようでした。

要するにセラダは自殺しなければならないような崖に追いつめられていたのです。断片的に小夜子サンに語ったところによりますと、大仕掛の密輸のせいだとも云いましたし、ギャングの一味だったせいだとも云ったそうですが、また共産党の一員で赤色スパイだとも云ったそうです。どれが本当なのか見当はつきませんが、ともかく死の崖へ追いつめられるほどの何かですから小さなことではありません。まだ証拠があがらないから大丈夫だが、遠からず証拠があがりそうだと語ったそうですが、そうだとすればギャングの方ではなくて、大密輸か赤色スパイの方でしょう。