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うらぎり

裏切り

坂口 安吾

「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页

青空文庫

日野は毎晩現れて、八千代サンの日ごとの変化と酔態をつぶさに見学していました。彼は彼女にお酒をおごったことがなかったので、その酔態を見たことはなかったのです。よしんば彼がお金持で彼女にお酒をおごろうとしても、トオサンが店にいる限りはそれを許さなかったでしょう。

女が処女を失うということと、泥酔するということは、ケダモノよりもあさましいものに見うけられました。しかし日野はそれに目をおおうようなことはしませんでした。むしろいつもの倍も目玉をむいて、ジロジロと観察にふけっていたのです。八千代サンが目の前でハダカにされてセラダに犯されたにしても日野の目玉はマバタキしなかったに相違ありません。

女というものはどうしてこう愚劣なんだろうかと日野はガイタンいたしました。男がこういう愚劣なものに凝らねばならぬ宿命を与えられているということは歎かわしい次第だ。この女の獣的異変と退化性と肉慾性とは平和な時代の道徳と相いれないものがある。侵略の兵隊の女狩りが彼女らの本性にふさわしいもので、兵隊にジュウリンされ隷属する性質のものだ。紳士に隷属すべからざるものなのである。