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さいかくとかがく
西鶴と科学
寺田 寅彦
「日本文学講座 第十五巻」改造社、1935(昭和10)年1月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,913 字 · 20 页
また若い学士が申出したある可能現象の実験的検査をその先生の大家が一言の下に叱り飛ばしたのが、それから数年の後に国外の学者によってその若い学士によって予測された現象の実在が証明されたというようなことも適にはあるようである。
しかるに、西鶴はその著書中にしばしば「世界の広さ」という言葉を繰返している。狭い国土の中に限られた経験だけから帰納して珍稀と思われるものの存在を否定してはいけないということを何遍となく唱えている。先ず『諸国咄』の序文に「世間の広き事国々を見めぐりてはなしの種をもとめぬ」とあって、湯泉に棲む魚や、大蕪菁、大竹、二百歳の比丘尼等、色々の珍しいものが挙げてある。中には閻魔の巾着、浦島の火打箱などといういかがわしいものもあるにはあるのである。また『諸国咄』の一項にも「おの/\広き世界を見ぬゆへ也」とあって、大蕪菜、大鮒、大山芋などを並べ「遠国を見ねば合点のゆかぬ物ぞかし」と駄目をおし、「むかし嵯峨のさくげん和尚の入唐あそばして後、信長公の御前にての物語に、りやうじゆせんの御池の蓮葉は、およそ一枚が二間四方ほどひらきて、此かほる風心よく、此葉の上に昼寝して涼む人あると語りたまへば、信長笑わせ給へば、云々」