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ふくめんのぶとうしゃ

覆面の舞踏者

江戸川 乱歩

「婦人の国」新潮社、1926(大正15)年1~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,827 字 · 30 页

青空文庫

尚お、組合せが極まりましたならば、お興を添えますために、その部屋の電燈をすっかり消すことになっておりますから、これもお含みおきくださいますようお願い致します」

これは多分井関さんが命じたままを復唱したものに過ぎないのでしょうが、それにしても何という変てこな申渡しでありましょう。いずれは狂気めいた二十日会の催しのことですけれど、ちと薬が利きすぎはしないでしょうか。私は、それを聞くと、何となく身のすくむ思いがしたことであります。

さて、ボーイ体の男が番号を読上げるに従って、私達三十四人の男女は、丁度小学生のように、そこへ一緒に並びました。そして、十七対の男女の組合せが出来上った訳です。男同志でさえ、誰が誰だか分らないのですから、まして相手と定った女が何者であるか、知れよう道理はありません。夫々の男女は、朧気な燈光の下に互に覆面を見交して、もじもじと相手の様子を伺っています。流石に奇を好む二十日会の会員達も、いささか立すくみの形でありました。

同じ番号の縁で私の前に立った婦人は、黒っぽい洋装をして、昔流の濃い覆面をつけ、その上から御丁寧にマスクをかけていました。