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ふくめんのぶとうしゃ

覆面の舞踏者

江戸川 乱歩

「婦人の国」新潮社、1926(大正15)年1~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,827 字 · 30 页

青空文庫

どうだい面白いだろう」

といった調子なのです。

「だが、そんな小説めいたクラブなんか、今時実際に在るのかい」

私が半信半疑で聞き返しますと、

「だから君は駄目だよ。世の中の隅々を知らないのだよ。そんなクラブなんかお茶の子さ。この東京には、まだまだもっとひどいものだってあるよ。世の中というものは、君達君子が考えている程単純ではないのさ。早い話が、ある貴族的な集会所でオブシーン・ピクチュアの活動写真をやったなんてことは、世間周知の事実だが、あれを考えて見給え。あれなんか、都会の暗黒面の一片鱗に過ぎないのだよ。もっともっとドエライものが、その辺の隅々に、ゴロゴロしているのだよ」

で、結局、私は井上次郎に説伏されて、その秘密結社へ入ってしまったのです。さて入って見ますと、彼の言葉に嘘はなく、いやそれどころか、多分こうしたものだろうと想像していたよりも、ずっとずっと面白い。面白いというだけでは当りません、蠱惑的という言葉がありますが、まああの感じです。一度その会に入ったら、それが病みつきです。どうしたって、会員を止そうなんて気にはなれないのです。会員の数は十七人でしたが、その中でまあ会長といった位置にいるのは、日本橋のある大きな呉服屋の主人公で、これがおとなしい商売柄に似合わず、非常にアブノルマルな男で、いろいろな催し