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おやかたコブセ

親方コブセ

金 史良

「新潮 通卷四百四十四號(一月號)」新潮社、1942(昭和17)年1942(昭和17)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,006 字 · 16 页

青空文庫

しかも、特別この座席には私とて無量な感慨なかるべからずで、つい心もたかぶり、徐ろに両手をひろげ、片足を長鼓の音に合わせてついと後に曲げ、

「オーハ、青春!」と、鶴の一声を放った。そして部屋中の歓呼を浴びながら、いい気になって自分では得意な積りの唄で一くさり踊り演じた。それが親方コブセにもすっかり気に入ったらしく、いきなり彼は猿のように私の首へ体ごと飛びついて垂れ下がり、けけけ、けけけと歯をむいてわらい出した。

「貴様は話せる、話せるよ! 今日は俺と一つつき合え! けけけ、けけけ」

その目から涙がぽろぽろと零れていた。

四時過ぎになり、部屋の連中はみな船へ乗込みに波止場へ向うことになった。私も見送りに出るO君や部落の人達と共にその後からついて行った。今度の連中は悉く独り者で、そのためなのか、それとも永い放浪生活が身にしみついたせいか、至って気軽な気持で出掛けていた。一寸そこら辺りへ出掛けるといった調子である。親方コブセは牛のように黙々と歩いて行く彼等にひどい跛足で追いつきつつ、途々しきりに注意を与えていた。

「お前達船酔いしそうになったらな、みんな取っ組み合って腕角力するんだぞう。