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きろくきょうじだい

記録狂時代

寺田 寅彦

「東京朝日」1933(昭和8)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,453 字 · 9 页

青空文庫

ばむつかしそうに思われる。できるだけのろく「歩く」競技も審査困難と思われる。しかしこのシガーの競技は可能であるのみならず、どこかに実にのんびりした超時代的の妙味があるようである。ただこの競技の審査官はいかにも御苦労千万の次第である。だれかしかるべき文学者がこの競技の光景を描いたものがあれば読んでみたいものである。

シガーの灰の最大な団塊を作ったというレコードもやはりドイツ人の手に落ちた。これは一九二九年のことであるが、ことしはヒトラーがたくさんな書物の灰をこしらえた。それでも昔のアレキサンドリア図書館の火事の灰のレコードは破れなかったであろう。

ベルギー人のメニエ君は一枚のはがきに一万七千百三十一語を書き込んでレコードを取った。これを書きあげるのに十四年かかったそうである。平均一年に千二百二十三語強、一日に三語ないし四語の割合である。面積一平方ミリに一語くらいの勘定になるようである。日本でも米粒の表面に和歌を書く人があるが、これに匹敵する程度の細字と思われる。聞くところによると、米粒へ文字を書くには、米粒を手のひらへのせて、毎日暇さえあればしみじみとながめている、するとその米粒がだんだんに大きく見えて来ておしまいには玉子のように、また盆のように大きく見えてくる、その時にまつ毛を一本抜いて、それに墨汁を浸し