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にんしきろんとはなにか

認識論とは何か

戸坂 潤

「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页

青空文庫

こうなるとやはり、認識はそれが如何に情意的な性質を有っているにしても、結局芸術や道徳的判断行為とは全く別な、理論的なものに制限されるわけだ。

認識が理論的なものに限る、又科学的なものに限る、ということは、甚だ当り前のようでもある。もしこういう認識を以て、つまり理論的か科学的かである認識を以て、情意的なもの芸術的・道徳的・等々・のものを蔽うならば、それは貧弱な形の合理主義であり、ひからびた主知主義であり、野暮ったい科学主義であると云われる。その通りである。もし認識がそういう理論的・科学的(つまり科学にのみ関係する処の)なものにだけ限られた用語でなければならぬとすれば、だ。処が逆に私は、認識なるものそのものを、理論や科学ばかりでなく、芸術的創作と享受にも、道徳的意識と行動にも、通用させようと云うのである。科学的認識ばかりでなく、芸術的認識、道徳的認識、という言葉は、非常に尤もに通用すると共に、新鮮で的確な意味内容を持っていないだろうか。

芸術的認識という言葉、つまり芸術も亦一般に、認識(広範な意義に於ける認識)である、ということを云い表わす言葉は、今日常識の一部となっているとも見られる。