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どくしょへんれき
読書遍歴
三木 清
「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页
先生の『概観世界史潮』が出たとき、私は『哲学研究』に紹介を書いたのを覚えている。大学院の学生として、先生のルネッサンス時代のイタリア史の講義を聴いたことも一つの思い出である。私はまた波多野精一先生から世界史的な見方について多くを学んだ。当時京大の文科には内田先生や坂口先生のほか、内藤湖南、原勝郎、三浦周行らの諸先生がいられて、まさに史学科の全盛時代であった。自分の専攻していた学科にもよるが、坂口先生以外、直接に就いて学ぶことをしなかったのは、惜しいことであったと思う。近来それら諸先生の著書を繙く機会のあるたびにその感を深くするのである。
その頃日本の哲学界においても次第に歴史哲学の問題が関心され始めていた。これは主としてヴィンデルバント、リッケルトらの新カント派の影響によるものである。したがって当時歴史哲学として問題にされたのは、主として歴史的認識に関する方法論、認識論の形式的論理的問題であって、ヘーゲルが考えたような世界史の哲学としての内容的な歴史哲学ではなかった。ディルタイの仕事の意味なども、まだ一般には十分に認識されてはいなかった。私も新カント派に導かれて歴史哲学の研究に入ったのである。