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どくしょへんれき
読書遍歴
三木 清
「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页
哲学の方面では、ハイデッゲル教授のほかに、ニコライ・ハルトマン教授の講義に出席した。教授もアリストテレスに興味をもっておられて、一度お訪ねした時、しきりにその話をされた。私が出たゼミナールで使われたのはカントの『純粋理性批判』とヘーゲルの『論理学』とであった。教授の『認識の形而上学』は、主観主義の哲学から入って、ラスクの研究によって次第に客観主義に傾きつつあった時分の私には、非常に新鮮で面白く感じられたが、ハイデッゲルの影響を強く受けるようになってから、ハルトマン教授の立場にはあまり興味が持てなくなった。マールブルクでは私はほとんど純粋にハイデッゲル教授の影響を受け容れたといってよいであろう。しかしその後ハルトマンの『倫理学』が出た時、私はこれを読んで再び教授の思想に対する興味を取り戻すことができた。
マールブルクにいる間、そしてその後もときどき文通によって、私の読書を指導してくれたのはレーヴィット氏であった。私は氏によって単に哲学のみでなく、広くドイツ精神史の中に導き入れられた。ディルタイとか、さらにさかのぼってシュレーゲルやフンボルトなどに対して私の眼を開いてくれたのはレーヴィット氏であった。