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「ふんしょじだい」のしゅつげん

論理とその実践――組織論から図書館像へ――

中井 正一

中井正一『論理とその実践――組織論から図書館像へ――』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「焚書時代」の出現、生まれ変った赤坂離宮、国立国会図書館について、知識と政治との遊離、地方文化運動報告、図書館法楽屋話、図書館法の成立、野に山にかかる虹の橋、民族の血管、「良書普及運動」に寄せて、機構への挑戦、巨像を彫るもの、国立国会図書館、集団文化と読書、実践について、組織としての図書館へ、地方の青年についての報告、聴衆0の講演会、図書館法ついに通過せり、図書館法と出版界、歴史の流れの中の図書館。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,021 字 · 120 页

青空文庫

しかし、だんだん減りはじめた。十人になり、五人になってゆく。テーマも面白く変えてみた。益々内容を充実してみた。勿論決死の努力をこめての熱演である。しかし滑稽なことには、いよいよ淋れる一方である。

その頃七十七歳であった母親は、いつでも歩いて聴きにゆける私の講演会には、判ってもわからなくても聴きにくるのであったが、私はこれには弱ってしまった。だんだん減ってゆく聴衆の中に、どんなにかくしても、チャンとモンペをはいてやって来る母親が、いかにも可哀想だといった顔付きで、三人位の聴衆にまじって話をきいている。このことは、だんだん私には耐えがたいこととなってきた。館は映画館「太陽館」のすぐ近所である。私が一番聴かしたい聴衆のマフラをつけた戦争帰りの若い青年達は、図書館の門までカギになって行列をし、私の待っている講演会場の窓からその横姿が見えているのである。

誰も来ない講演会を、しかも母親と二人で一時間ばかり待って、ついに放棄するハメに二度も陥ったのであった。いかにも気の毒そうに眼のやり場のない私を、なんにもいわずにじっと見ていた母が、私には夢の中で突然、物が巨大になる瞬間のような異常な存在のように、たとえがたいものとなって胸にしみてならなかった。