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ぶたきちとヒョロこ
豚吉とヒョロ子
三鳥山人
「九州日報」1926(大正15)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,498 字 · 111 页
「私はこの橋の番人だがね。お前さん方はこの橋を渡るならば渡り賃を置いて行かねばなりませんよ」
「そうですか。おいくらですか」
と豚吉は云いながらポケットからお金入れを出しますと、お婆さんは又こう云いました。
「けれども、当り前のねだんでは駄目ですよ。当り前だと一人分一銭宛ですが、あなたの方は当り前の人間の倍位肥っていられますから、その倍の二銭いただきます。それからあっちの奥さんは、やっぱり当り前の人よりも背丈けが倍ぐらい長いようですから、やっぱり倍の二銭出して下さい」
これをきくと、豚吉は出しかけたお金を引っこめながら、
「おいおい、お婆さん。馬鹿なことを云ってはいけない。いかにも私の身体は他人の倍ぐらい肥っているが、背丈けは半分しかないから当り前の人間と同じことだ。あのヒョロ子でも背丈けは当り前の倍ぐらいあるが、その代り当り前の人間の半分位痩せているから、これも当り前の渡り賃でいいだろう。さあ二銭あげるから、これで勘弁しておくれ」
と云いました。
ところがこれを聞くと、お婆さんは大層憤ってしまいまして、小さな小舎から出て来ると、橋のまん中に立って怒鳴りました。