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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
第二の影はよろよろと片陰の木の茂みに身を潜めた。
人影を行き過ぎさせようとしたのである。
けれども、どうしたことか、今まで正面ばかりを見ていた第一の影は、その木立の前へ来るとピッタリ歩くのをやめた。そして、非常に熱心な態度で反対の方を見守っている。そこには、かなり多くの木々の梢に遮られながらも、村役場の灯火が赤く赤く、非常に目立つ輝きを以てまたたいていたのである。
第一の人影は、暫く全身の注意を傾けて、その一点の光明を凝視していたが、やがて急に身を躍らせ両手を宙に振りあげて跳ね上ると極度の歓喜(よろこび)と喫驚(おどろき)の混同したような、非常に高く鋭い、
「ワアーッ!!」
という叫び声を発するや否や毬のように走り出した。
二つに折り曲った体、口を開き歯を露出した頭を前へ突出して、瞬きもせず、ただ一方を見守って砂煙のうちを走る彼の体の周囲には、迅(はや)い風音がシュッシュッと後へきれぎれに取り遺されて行ったのである。
第二の影はまたソロソロと歩き出した。
両手で顔を掩いよろめく小さい姿は、風のなぶり者となりながら、次第次第に遠くなって行った。
十八